社会保険労務士とは、社会保険労務士法に基づき、毎年一回、厚生労働大臣が実施する社会保険労務士試験に合格し、かつ、2年以上の実務経験のある者で、全国社会保険労務士会連合会に備える社会保険労務士名簿に登録された者をいいます。平成18年4月末日現在、社会保険労務士は全国で30,398人、社会保険労務士法人会員は、183法人です。
社会保険労務士制度は、企業の需要に応え、労働社会保険関係の法令に精通し、適切な労務管理その他労働社会保険に関する指導を行い得る専門家の制度です。この制度は、労働・社会保険に関する法令の円滑な実施を図り、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上を目的とした社会保険労務士法(昭和43年6月3日法律第89号)により定められています。
◆ヒトに関するエキスパート
社会保険労務士の業務は、多方面にわたっているので一口では言い表わせませんが、労働社会保険関係(健康保険法、厚生年金保険法、国民年金法、労働基準法、労働者災害補償保険法、雇用保険法等約50の法律)及び人事・労務管理(人事管理、労働条件管理、人間関係管理、労使関係管理等)の専門家として、企業経営の四要素(ヒト・モノ・カネ・情報)のうち、ヒトの採用から退職までの労働及び社会保険に関する諸問題、さらに老後の年金を含む生活設計や介護の相談に応じる、ヒトに関するエキスパートです。
◆人事労務のアドバイザー
少子・高齢化時代を迎え、事業主は、法律により定年を60歳以上に設定することが義務づけられ、定年後も65歳までの再雇用の努力が求められています。
また、定年後の生活設計なども今後の重要な課題となってきています。さらに、女性の職場進出に伴い、女性の能力を如何に活用するかが企業の主要な要素となってきており、いわゆる男女雇用機会均等法でも、そのための具体的な指針が示されています。
一方、働く人の意識も近年大きく変化し、職務内容や勤務形態も個人ごとに異なった希望を持つようになってきています。したがって、従来のような一律の人事・労務管理では対応できなくなって、多くの企業では新しい時代にマッチしたヒトの管理をするために、就業規則の見直し、年俸制、職能給等の導入など賃金体系の変更、能率を上げるための労働時間制や働き方をすることなどが求められています。
社会保険労務士は、専門的知識により、企業の状況に応じ、このような問題について適切なアドバイスを行います。
◆事務処理の専門家
毎年継続事業が原則として、5月20日までに行う「労働保険(労働者災害補償保険・雇用保険)料の当年度の概算保険料、前年度の確定保険料の申告・納付」(年度更新)、7月10日までに行う「健康保険・厚生年金保険報酬月額算定基礎届」(算定基礎)は、その基礎となる賃金の定義や保険料の算出について専門的知識が必要で、それが適正に行われていなければ、雇用保険の失業給付、健康保険の保険給付の額や、将来の年金額に大きな差が出てきて、受給者が不利益を被るケースもでてきます。そのような場合、事業主に損害賠償責任を請求されることもありますので、これらの事務処理は十分注意が必要となります。
また、事業主が申告や届を所定の期限までに行わなかったとき、申告した額に誤りがあったとき、また保険料を所定の期限までに納付しないときには、認定決定による追徴金や延滞金が徴収される場合がありますので、適正な事務処理が必要です。
社会保険労務士は、これらの事務処理を事業主に代わって的確に行います。
◆就業規則作成のプロ
就業規則は、労働基準法の規定により、法人事業所、個人事業所を問わず常時10人以上の従業員を雇用する場合、事業主に作成が義務付けられている、いわば職場の憲法です。
就業規則の内容は、労働基準法を始め、関係法律に定められた要件を満たしており、その作成手続も法定の手続によることが必要であり、また個々の企業の実状に合ったものであることが重要です。しかし、事業主のなかには、従業員が10人を超えたので、市販の就業規則で間に合わせたため、事業場の実際と大きな喰い違いがでて、従業員との争いが生じたり、労働基準監督署から注意されたりするケースがよくあります。
また、就業規則は、労働条件や雇用管理に関する法令が次々と制定あるいは改定されるのに適合させることが求められるので、常に見直すことが必要ですし、各種助成金の申請の際にも就業規則の添付が要求されますので、従業員10人未満の事務所でも作成が必要でしょう。
社会保険労務士は、労働基準法等の関係法令はもとより主要労働判例、解釈等に精通しておりかつ、企業の実体に合った就業規則の見直し・作成を行います。
◆年金制度のプロ
今後の少子・高齢化時代において年金は、老後の生活にとって大変大きな比重を占めてきます。年金を受給できるか否かで、老後の生活設計が大きく左右されるといっても過言ではないでしょう。
しかしながら、現在の年金制度は、将来の長寿社会に対応して何度も改正が行われ、新旧の制度が並立して、一般の人には分かりにくくなっています。そのため、制度が変更されたのに気がつかず、所定の手続を怠ったり、また、被保険者であった期間が短かったため、自分で年金は受給できないと思い込み、その後所定の手続をしないで、年金の受給権を喪失してしまうなどのケースが多くあります。さらに、年金額の基礎となる保険料の算定方法を誤り、年金を受給するとき、自分の予測した額より少ないケースもよくあります。
社会保険労務士は、年金の加入期間、受給資格等についてわかりやすく説明するとともに、年金の裁定請求に関する書類を依頼人の皆様に代わって作成、提出いたします。
◆労働安全衛生のバックアップ
労働者の安全管理、健康の保持増進を確保するのは事業者の責務です。
私たち社会保険労務士は、労働災害の防止、従業員への安全衛生教育等を通じ、快適な職場環境の実現をお約束いたします。
<全国社会保険労務士会連合会HPより引用>