腹が空いて見逃してしまいましたが、廃止された佐渡航路フェリー定期便の待合室は、佐藤允彦、角田光代、石川直樹、山下洋輔、田中泯、そして多くの旅行者らを呼び寄せ、奥能登国際芸術祭「さいはてのキャバレー」として温存されているそうです。かつて原子力発電所の建設計画が推進された珠洲市全域を会場にして今年のトリエンナーレ「奥能登国際芸術祭」は日程を変更して開催され、私が訪問したときは断続する地震の被害にもめげず多くの人達がボランティアで運営にあたっていました。能登半島の先端部にあたる珠洲は半島の内浦と外浦の両方に面し、穴水から車で七尾湾を右に見ながら海岸線をトレースして走ると湖より静かで穏やかだった海面が岬の峠を越すあたりから沖を眺めると白波が泡立つような荒海に変わります。海に山が迫る半島の四十数か所に展示会場が散らばり、地元の人達も生活圏が違うと行ったことがないという場所を、ボランティアの立てた看板を頼りに車を走らせました。風力発電の風車や大きな実が弾いた椿やいつ収穫するのか心配な柿の木など見ていると、帰り道、ちゃんと戻ることができるのか心配にもなりました。そんな場所でも、地元のお母さんたちがギャラリーのお世話をしてくれて、地震のことを訊ねると「ウチの屋根は大丈夫」と明るく応えてもらったのですが、よく聞くと家の壁がヒビだらけでも雨漏りはしていないだけなのだと分かり、自分達がここに来るだけでも意味があったのだと思い、芸術祭は原発よりも価値があるのだと考えることができました。いま絶滅危惧市と言われる珠洲には何度か新卒求人で訪問したことがあり、多くの生徒を紹介してもらった珠洲実業高校が廃校になったことを知りました。隣接する町にあった小木水産・柳田農業・輪島実業・町野高校、少し先にあった中島高校・七尾商業・七尾工業・七尾農業・富来高校・高浜高校も統合されており、地域の宝として多くの生徒たちが各地に送り出されたことが分かります。廃校になったのは高校だけでなく、芸術祭の展示会場には廃校になった小学校や保育園が幾つも使われていました。取り壊すことなく残された校舎はそれ自体が何かを語りかけてくるような個性に溢れ、校舎に負けないパワーを秘めた展示品が集まったようです。そして、廃線になった能登線の駅舎もまた展示会場として使われ、黒丸・鵜飼・上戸・飯田・珠洲・正院・蛸島と続く各駅が乗ったことのない鉄道にひとつ一つの想いを呼び覚ますかのような場の雰囲気を醸していました。飯田駅前にはお世話になった同業の先生の事務所が看板を上げたまま残され、往年を知る者には時を逃し終い忘れたモニュメントの様に見えました。三崎の小学校からランプの宿を廻って大谷あたりでガソリンの残量が気にかかり、輪島まで持つだろうかと探し始めるとガソリンスタンドの廃業が目につきます。次回は燃料をたっぷりと補充して、あと半日あれば全展示会場をコンプリートに回り終えることが出来そうです。
さいはてのスタンプラリー
腹が空いて見逃してしまいましたが、廃止された佐渡航路フェリー定期便の待合室は、佐藤允彦、角田光代、石川直樹、山下洋輔、田中泯、そして多くの旅行者らを呼び寄せ、奥能登国際芸術祭「さいはてのキャバレー」として温存されているそうです。かつて原子力発電所の建設計画が推進された珠洲市全域を会場にして今年のトリエンナーレ「奥能登国際芸術祭」は日程を変更して開催され、私が訪問したときは断続する地震の被害にもめげず多くの人達がボランティアで運営にあたっていました。能登半島の先端部にあたる珠洲は半島の内浦と外浦の両方に面し、穴水から車で七尾湾を右に見ながら海岸線をトレースして走ると湖より静かで穏やかだった海面が岬の峠を越すあたりから沖を眺めると白波が泡立つような荒海に変わります。海に山が迫る半島の四十数か所に展示会場が散らばり、地元の人達も生活圏が違うと行ったことがないという場所を、ボランティアの立てた看板を頼りに車を走らせました。風力発電の風車や大きな実が弾いた椿やいつ収穫するのか心配な柿の木など見ていると、帰り道、ちゃんと戻ることができるのか心配にもなりました。そんな場所でも、地元のお母さんたちがギャラリーのお世話をしてくれて、地震のことを訊ねると「ウチの屋根は大丈夫」と明るく応えてもらったのですが、よく聞くと家の壁がヒビだらけでも雨漏りはしていないだけなのだと分かり、自分達がここに来るだけでも意味があったのだと思い、芸術祭は原発よりも価値があるのだと考えることができました。いま絶滅危惧市と言われる珠洲には何度か新卒求人で訪問したことがあり、多くの生徒を紹介してもらった珠洲実業高校が廃校になったことを知りました。隣接する町にあった小木水産・柳田農業・輪島実業・町野高校、少し先にあった中島高校・七尾商業・七尾工業・七尾農業・富来高校・高浜高校も統合されており、地域の宝として多くの生徒たちが各地に送り出されたことが分かります。廃校になったのは高校だけでなく、芸術祭の展示会場には廃校になった小学校や保育園が幾つも使われていました。取り壊すことなく残された校舎はそれ自体が何かを語りかけてくるような個性に溢れ、校舎に負けないパワーを秘めた展示品が集まったようです。そして、廃線になった能登線の駅舎もまた展示会場として使われ、黒丸・鵜飼・上戸・飯田・珠洲・正院・蛸島と続く各駅が乗ったことのない鉄道にひとつ一つの想いを呼び覚ますかのような場の雰囲気を醸していました。飯田駅前にはお世話になった同業の先生の事務所が看板を上げたまま残され、往年を知る者には時を逃し終い忘れたモニュメントの様に見えました。三崎の小学校からランプの宿を廻って大谷あたりでガソリンの残量が気にかかり、輪島まで持つだろうかと探し始めるとガソリンスタンドの廃業が目につきます。次回は燃料をたっぷりと補充して、あと半日あれば全展示会場をコンプリートに回り終えることが出来そうです。
posted by 丹保社労士事務所 at 2023年11月03日
| スモールトーク
加賀三湖から世界のコマツへ
長くて暑い夏は彼岸を過ぎてもまだ終わった気がしません。南の風が雨を誘ってひと涼みのつもりが蒸してくると気温以上に暑苦しく感じます。コロナで手を洗う癖がついたら冷たい水の気持ちよさも覚えてしまい、手洗いの序でに頭から水を被りたくなってきます。いつまでも暑い暑いと空調の効いた部屋に閉じ籠っていては良くないと思い、先日、研究会のスピンアウト企画ということで小松の山間地をほっと石川観光マイスターの辻さんに案内してもらいました。ほんとは、もっと涼しい風にあたって歩くつもりだったのに、やはり例年並みとは言えないのが今年の夏でした。「加賀立国1200年」ウォークと名付けられたイベントは行政にオーソライズされたものでなく、参加者の懇親と健康づくりを兼ねて開催する謂わばプライベートな行事です。しかし、能美市・小松市では越前国分割という形で遅れて設けられた加賀国の立国1200年は重要な地域イベントのようで、かつての「河田山古墳群史跡資料館」は改装が施されて名称を「加賀国府ものがたり館」と改め、施設の職員の方から私達は大いに歓迎されたような印象があります。ただ、改称から日が浅く、カーナビにもネット検索にも掛からず集合には手間取りました。さて加賀立国1200年、弘仁14年(西暦823年)に越前国七郡から能登越中に近い江沼と加賀の二郡を分かって加賀国を立国したもので、直後に江沼郡から能美郡を加賀郡から石川郡を独立させて加賀国は四郡編成となり、律令制の地方行政府である加賀国府の置かれたのが今の小松の国府地区だったそうです。国府のあった古府台地は梯川と鍋谷川の合流地点に位置する高台で、梯川河口の安宅とは水運で結ばれた交通の要衝であり、小松の名の由来が弥生時代に朝鮮半島と往来する高麗津を起源と考えるのも説得力を増してきます。小松南部の丘陵地では半島伝来の須恵器窯跡や古代製鉄遺跡が多く見つかり、JR小松駅東側の弥生中期環濠集落跡からは西日本一帯に流通した勾玉管玉の生産も確認され、加賀三湖の水運を背景に梯川を通じて安宅から白山をランドマークに日本海沿岸に広がる交易は世界のコマツとして認識すべきなのかも知れません。こんな話を聞きながら、住宅造成地の片隅にある河田山古墳群跡をスタートして白山の伏流水が湧く桜生水で一息入れて加賀藩二代藩主前田利常公灰塚から天保十年糠虫大発生の駆除を供養した埴田の灰塚を経て府南社推定地の石部神社まで、古墳時代から藩政期に至る盛り沢山のコースを二時間足らずで歩き抜くことができました。
posted by 丹保社労士事務所 at 2023年09月29日
| スモールトーク
北信濃のゴールドラッシュ
この夏、お盆前、小松では気温が40度を記録し、日本で一番暑い地点となりました。フェーン現象で山越えの熱風が小松の辺りを流れたようです。台風が近づくとよく起こる現象ですが、ここまでになると、雨も少しぐらい降らせてくれないかと思ってしまいます。なにしろ、長い間、雨らしい雨が降りません。ほんとは、降らない方が気楽でいい筈なのに、今年は毎日の水遣りが欠かせなくなって、これが少し面倒になったのです。何年か前まで母が実家の背戸に野菜を作っていたのが、介護施設の世話になるようになってから雑草が増え始め、草むしりするくらいなら何か植えてみようと思い、昨年、試しにサツマイモを植えたらちゃんとできて、今年は、調子に乗ってカボチャまで植えてしまいました。しかし、今年の夏は普通ではなかったようで、暑さで雑草は枯れてしまい、たっぷり水を遣らないと暫らくで作物も萎びてしまいます。そして、水が掛かったところだけは雑草が元気で、カボチャは雑草の陰で申し訳なさそうに花を咲かせている有り様です。何も植えなければ水遣りすることもなく、水を掛けなければ草が伸びることもなく、簡単に草取りを終わっていたかも知れないと思うと、気持ちの萎えるところがあります。しかも、カボチャの収穫は2つだけ、苗を3株植えたうち実になったのが2つでした。後で聞いたら、これでもラッキーだったかも知れないのですが、本当に暑くならないうち自然に受粉したのが2つだけあったと考えるべき状況だったようです。カボチャには雄花と雌花が有って、一度に咲く花の数が少ないため人工授粉しないと実を結ぶチャンスを逃すことが多いとのこと。話を聞いたのが暑くなってからで、水遣りに行く時間には花が萎んでいて受粉できず、そのうち暑さが厳しくなるにつれて咲くのは雄花ばかりで雌花を付けなくなりました。蔓が伸び放題の株はだんだんと弱り、水を遣っても枯れてしまい、雑草のなかに2つの実だけが残りました。収穫前に蒸し上がってしまったかと思ったカボチャでしたが、しばらく置いて切ってみたら思いのほか実も詰まり、カレーに入れてもらうと普通に食べて大丈夫な出来でした。この頃の野菜の甘さには少し驚きます。何も知らずに作っても、品種改良ということなのでしょうが、甘みのある旨いカボチャができるのです。たまたま、先日、通りかかった信濃町は「ゴールドラッシュ」で渋滞気味でした。ここではトウモロコシの収穫時期で、農園の即売会場に車が列を作っていました。そして、このゴールドラッシュも確かに甘くて食べ易いのです。甘さの理由は気温の寒暖差と早起きだそうで、素人が簡単にできると思ってはいけないのですが、来年はトウモロコシにチャレンジする手も有りかと秘かに想いを巡らせながら、目の前のサツマイモの葉より立派に茂った草藪を眺めています。
posted by 丹保社労士事務所 at 2023年08月31日
| スモールトーク
のこぎり坂が祝言坂の蓮如道
急な山道をのこぎりの歯のように屈曲して登る加越国境の難路と記されている細呂木から吉崎に向かう旧街道は、江戸時代の初めには大名道路として大改修がなされ明治になってからはこれを切り下げて険しい山道が今のように歩き易い道になったということです。鎌倉時代には越後に流された親鸞がここを通り、室町時代には吉崎に御坊を建立のため下向した蓮如がここを通り、今も、真宗門徒は毎年の行事として御影を担ってここを通ることになっています。私達もこの道を歩いてみようと、晴れ男を自任する大聖寺文化協会の事務局長さんにガイドを引き受けて頂き、梅雨のうちなら酷い暑さは心配ないと考えて7月の上旬にチャレンジしました。しかし、気象予報は降水確率を上げ続け、当日の天気も次第に雨が止みそうではあっても上がりきらず、御山から蓮如道の入口までたどり着いたものの、その先を歩くことはあきらめ別の日に出直すことにしました。浄土真宗の東別院と西別院が並び立つ吉崎には道の駅がオープンして、地元の物産や土産物の販売所のほか私にはハイエンド超えのようなカフェもできていて、雨でも退屈しない観光スポットとして整備されたようです。県境を越えて福井に入ったせいか、おろし蕎麦や焼きサバ寿司が旨そうでしたが、今回、これも名物かなり小さめの酒饅頭を土産に買ってしまいました。実は、ここには道の駅ができる前から「吉崎御坊蓮如上人記念館」があって、入館すると学芸員の方のエスコートで、一人だと見る前に通り過ぎそうな展示物をより面白く見ることができます。蓮如は南無阿弥陀仏の名号や教義の解説というべき御文を大量に発出して教線を拡大したとされ、生産力が増大した越前・加賀に狙いを定めて進出を企てたと思われます。寄進奉納の量と質に比例して仏のご利益が顕れるかの如き分かり易くも隔絶感の強い密教系の教えと比べて、全てに平等な救済を説く鎌倉新仏教として特徴的な教義を集団で高揚させる布教は、時代と地域にチューニングしたかのようです。もとは真言の寺が真宗に宗派替えしたり、もしか一向一揆の乗っ取りか、お寺を基盤にした活動は独特で、仏像も御守りもご祈祷もお祓いもなく、一期一会の信仰で救われる宗教的合理性は、現代の新興宗教にとって不都合な到達点かも知れません。すでに救済されて極楽浄土が約束されていると言われても「阿弥陀も銭限」で、堕とされることはないので「地獄の沙汰も金次第」と言わないだけの知恵かも知れません。ただ、超能力を売り物にしなかったところがこの時代の宗教革命とも考えられます。この正当性と合理性を明らかにする正信偈の一節は、映画「ブルースブラザース」でブラックミュージックの伝統を延々と説くシーンを思い出させ、河口の港に面して要塞のように見える御山に据えられた御坊は宗教施設としての役目を超えたものを想い描きます。確かめる術はないものの、このあと序でがあって再度この道を歩いたときは、暑くて風がなく虫の多い日で、ウグイスが法華経を読んで案内してくれました。
posted by 丹保社労士事務所 at 2023年07月30日
| スモールトーク
さっきサイバー攻撃が始まった
円安の影響が大きいのか、コロナで物流が滞ったせいなのか、身近なところで物価上昇が激しく細々とした料金の引き上げも目立つようになりました。驚いたのはIT関係の料金改定の厳しさです。食料品の量が何割も減ったとか価格が何割も高くなったとかでなく、従来の契約が満期になると既存のサービスが終了してしまい類似同等のサービスを提供するには何倍も高価な契約に乗り換えるよりない、というような仕組みで料金が上昇する仕掛けでした。労働契約でいうと賃下げか退職かを迫る解約変更通知のような感じで、十分な準備をしないままITシステムを乗り換えることは実質的に不可能であり極端な料金アップを受容するより選択肢がありません。たまたま、私どもの事務所では昨年の春に給料計算ソフトの更新時期が到来してこの壁に衝突し、料金アップに対応することができずソフトの数量とレベルを下げて再契約することを選択しました。今年は労働社会保険の電子申請ソフトがバックアップ終了を迎えるという通知を受けて、後継として提示を受けたのは余りに高価な新システムばかりだったため、かなりの無理をしながら別会社のシステムに乗り換えることにしました。私の印象では、大会社に対して電子申請が義務化されたことで、システム会社が小規模な社労士事務所から大会社にシフトしてしまい、私どもの事務所に向けても大会社レベルのものしか出さなくなったようです。結果としては料金面ではわずかのアップで済みましたが、システム変更に伴うデータの引っ越しなど膨大な手間と時間を費やしました。ただ、驚いたのはこの後の出来事です。この変更作業が何とか落ち着いた頃、これまで使っていた電子申請システムに不具合が発生して手続きが進まないという噂が伝わってきました。4月から5月にかけて普段でも入退社の手続きが錯綜して滞ることの多い時期で、その頃は未だ不思議でもないことでした。ところが、6月に入って、このシステム会社のサーバがランサムウエアに攻撃されたという報告が入り報道も流される事態に至り、私どもの事務所が危うくこの被害をすり抜けていたことを知りました。このシステムを利用している同業の社労士事務所では、労働社会保険手続に加えて給料計算も全て手書きの作業に変更して対応したと聞いています。システム会社も少しずつ復旧をはかっているようですが、顧客に対してどのような対応をするのかはこの先のことのようです。自社のパソコンやサーバーが攻撃を受けた際の賠償責任保険は業界向けに整備されており、これがクラウドにも対応するのであれば顧問先に対しての損害は補填されることになりますが、損害額の算定は難しいようですしランサムウエアの求めに応じて金銭を支払っても身代金は補填されません。それよりも、休日出勤や深夜残業までして社労士事務所が被った金銭的心理的負担に対するシステム会社からの賠償が気になります。なにしろ、どこも社労士事務所としては顧問先に迷惑が掛からないよう全力を出し切ってこの危機に立ち向かったのだと考えています。私どもの事務所にとって、たまたま、避けることができた危機でした。しかし、この先、この次、私どもの事務所が直接のターゲットにならなくても、関連のシステム会社に何かあるとどうなるか分かりません。情報のサプライチェーンといわれる中で、完璧ではなくてもできる限りで、可能な対応は考える必要があります。
posted by 丹保社労士事務所 at 2023年06月30日
| スモールトーク
危険で贅沢な白亜紀の壁
5月は父親の祥月で、墓場の近くを通るとき思い出しながらも、時間を作ってお参りしようとするころには日が過ぎてしまうのがここ数年の繰り返しでした。いつもこれでは父に申し訳ないと思い、今年は母がお世話になっている施設の方にお願いして墓地で母と時間を合わせ、一緒にお参りすることができました。穏やかな風で陽射しも柔らかく、母の体調も上向きだったようで、正月以来の実家に上がり込んで仏壇にお参りすることもできました。草藪になった背戸の畑を見ても母から小言が聞こえてこないことに寂しさを覚えながら、自分の植えた花が咲いているのに気づいて幾輪か切って持ち帰ってもらえたので気が鎮まりました。次はお盆かと思い、草の茂る隙間に植えた苗に水遣りをして、そのまま帰るには少し時間が早いので、白山麓に向けて車を走らせました。白山手取川ジオパークの認定でおすすめスポットになる桑島の化石壁まで行ってみようかと考えたのです。まずは、ダムを挟んで対岸にある白山恐竜パーク白峰に立ち寄りルートを確認したら、立ち入り禁止とは言われないまでも足元が「危険」だそうで、廃屋の駐車場に車を停めてダム越しに眺める方が見晴らしがいいようです。わざわざ危険を冒すほど気合を入れて行くつもりはなく、靴もヘルメットも手袋も準備しておらず、せっかく入場料を払ったので白山恐竜パーク白峰で時間を過ごすことにしました。恐竜といえば峠を越えた先の勝山にある福井県立恐竜博物館が有名で規模が大きく見応えのあるものです。ただ、現在こちらはリニューアル休館中とのこと、それまではこのエリアだと白峰の独壇場というところで、市役所スタッフの方が言う「元祖」としての存在感が重い施設です。元祖というだけあって随分と古い施設で、化石を見つけることができる建造物を解説した案内図には「石川銀行武蔵支店」の名称が残されていて、合併して白山市になる前の「白峰村」の時代から運営されていることを窺うことができます。とはいえ、行政の気遣い旧石川県庁舎「しいのき迎賓館」は真新しい修正が施されていました。金沢方面からはUターンするように右折して急坂を這い上がるあたりからスリリングで、綺麗にペイントされ次々と現れる恐竜の卵の案内板に目を停めるゆとりはなく、大型バス可とある駐車場をみるとバスが来なくてよかったと思います。施設自体は小学生を退屈させないよう意識した感じで、化石発掘体験なども準備されているので、家族で楽しめる施設として見ると弁当があれば一日コースかも知れません。パンフレットによると一般ボランティアに参加要請して化石調査や化石クリーニング・レプリカづくりも実施しています。恐竜の化石だけでなく、桑島化石壁と呼ばれる一億三千万年前の白亜紀前期の堆積地層に埋まっている多様な動植物の化石を見つけるのは、他にはない贅沢な遊びのようです。さて、我が家の墓石は黒御影だったか、化石が浮かぶ堆積岩ではなかったはずです。
posted by 丹保社労士事務所 at 2023年05月30日
| スモールトーク
積み残しイベント
色々な場面で「懇親会」が開催されるようになってきました。パーテーションのないテーブルを囲み、当たり前にアルコールの乾杯で始まり、大皿を避けて個々に取り分けた料理が配られると、次第に歓談の声量が大きくなります。堂々とした二次会のお誘いは控え気味というところでしょうか。 コロナ感染を警戒して出席を躊躇する人は少ないようで、久しく顔を合わせる機会がなかったことから、その穴埋めをする気持ちで参加する人が増えている気がします。これからの時期、新年度に入って前期の決算を終えて総会の開催に続けて懇親会を企画する団体が多く、会場探しに苦労するようになってきたとも聞いています。私ども社会保険労務士の集まりではここ暫く総会など多数の人に参加を呼び掛けることなく委任状の提出を求め、その結果、同業の者同士が情報交換する機会が極端に少なくなってしまいました。ZOOMなどネット経由でそれなりの情報は伝達され消費されていても、ナマのコミュニケーションに渇きを覚えた印象があります。ポストコロナ、ビヨンドコロナと言われるこれからの時代を考えると、ネットを経由した上質な情報の流通を衰退させることなく、人と人の繋がりを確かなものにして組織としてのまとまりを築き上げることが期待されているように思われます。石川県社会保険労務士会では小松支部の名称で能美郡・能美市・小松市・加賀市に拠点を置く者で一つの支部を構成しており、私自身はこの支部に所属するのですが、何年も前から支部役員を降板したままコロナで支部が活動を抑制していた時期を過ごし、状況認識が曖昧なままに突然の支部役員復帰という事態に陥りました。数年に亘り殆どの事業は休止し、その間の会費は未収ながら十分に繰越金を抱え、会員はお互いの顔も名前も分からない位置からの再スタートのようです。かつての事業を思い出しても仕方ないのですが、商工会議所での雇用対策セミナー開催や旧小松短期大学での社会保険セミナー開催などは消滅し、バーベキュー大会や地元温泉での泊りの懇親会も継続した開催が難しく、前執行部から引き継いだイベントは一泊二日の研修旅行でした。様々の事業を実施継続するに至った事情も消滅に至った事情も詳しくは分かりません。基本的な会の事業として考えると、個々の会員の資質向上と会員相互の連携強化がミッションであり、行政機能が金沢に集中しているなか、地方の支部として地域との連携もまた期待されるところです。当面、積み残しとも言うべき研修旅行ですが、資質向上と相互親睦の趣旨を兼ね備えたメインイベントとして企画したところ、多数の参加申込を受け実施に向け企画が進行中ということです。コロナ禍でバラバラの会員が何かお互いを必要としている時期に来ているようです。「孤立が連帯を求める」というオルテガの言葉を思い出します。
posted by 丹保社労士事務所 at 2023年05月08日
| スモールトーク
近未来のデジタル生活
マイナンバーカードを作るとマイナポイントがもらえるとか、マイナンバーカードを健康保険証として利用する申し込みをしたり公金受取口座として登録したりすると更にマイナポイントが上乗せされるとか、まさかと思うような施策に乗って2月のうちにマイナンバーカードの作成申込は75%を超えたようです。行政にとっては、複数の窓口機関ごとにバラバラに存在する同一人物の個人情報が紐付けされて突き合わせられることで、行政手続きが効率化されて国民の利便性も向上し不正受給の防止など公正な社会の実現につながると言われています。実際のマイナンバーの利用は厳しく制限されており、社会保障と税と災害対策の分野に限定して、なりすまし防止のため利用目的を明示して番号と実在の確認を経た本人確認をしてマイナンバーを取得することになっています。私ども社会保険制度に関わる事務所の業務に於いてマイナンバーを扱わずに手続きが進むことはほとんどなく、行政の利便性向上と併せて裏付けとなる個人情報の紐づけとなる「ヒモ」の確実な入手と厳格な取り扱いが重要になり負担にもなっています。例えば被扶養者の異動にあたってマイナンバーに関わる本人確認ということですと、利用目的を明示したうえで事業主を通してその従業員の家族が本人に間違いないことを「マイナンバーカード」或いは「マイナンバー入り住民票+顔写真付きパスポートなど」で確認ができていることを要求されることになります。そして、保存を前提にマイナンバーを取り扱った際にはマイナンバーの入手状況や取扱担当者の記録も必要となりますし面倒なことに不要となったマイナンバーを消去した記録も残さなくてはならないと言われています。このマイナンバーに顔写真やICチップをまとめたものがマイナンバーカードということで、公的証明の取得に利便性が高まり健康保険証や運転免許証とも一体化され、カードの電子証明書機能をスマホに搭載すると各種の行政サービス基盤とも連携一体化すると様々な支援がワンストップで済むという将来像が描かれています。これまでクラウドに人がアクセスして情報を入手していたのが、これからはサイバー空間から人工知能が情報提供してくるというイメージになります。そのため、紙にハンコを押すなどアナログ的ルールが見直されてデジタルに適合性親和性のある方法に移行しており、ガバメントクラウドとしてオンライン申請が当たり前のことになって来るようです。身近なところで先行しているのが金融機関で、これまで窓口で印鑑や通帳を確認しながら入出金したり送金したりしていたのが、窓口で現金を扱うことが殆どなくなると近くて便利と思っていた支店が閉鎖され、そろそろ小切手も預金通帳もなくなってしまいそうです。マイナンバーカードを作ることさえ難しい高齢者などデジタルデバイスといわれた時代のことを思い出すと、時代の流れに乗るというより滝壺に飛び込むくらいの時代に差し掛かっているように思います。
posted by 丹保社労士事務所 at 2023年04月04日
| スモールトーク
埃まみれの魔除け
魚屋の店頭に大きなイワシが皿に盛られていました。胴が太くて旨そうに見えましたが、直ぐに家に帰るわけにいかず、かごには入れませんでした。ここ暫らくイワシは質のいいものが豊漁で、群れが浜に打ち上げられたりしたこともあり地震の心配まで出ています。煮ても焼いても旨いと思うのですが、我が家のスタンダードはナンバを入れて醤油で煮て食べます。小鰯なら骨が分かれるくらい湯に通して酢をかけると酒飲みの肴になります。私は酢を選べないので、なかなか家では食べることができません。それで、少し大きめのを普通に煮て食べるのです。イワシに限らず、どんな魚もナンバが入ればハズレはないようです。サバのソロバンというかぶつ切りでも、カレイでもアカラでもコゾクラでも、魚でなくてもナンバで味が引き締まります。私の父親は熱めに燗した酒にナンバを入れて、これを銚子に一本ほど風邪薬のように飲むことがありました。どのタイミングで飲むと効くのか、体で覚えていたようです。私が真似しても安定した効果はなく、割とよかったのは、熱っぽいとき飲んで寝ると悪い汗を掃き出すようにすっきり目が覚めた程度です。でも、この「ナンバ」というのが大阪で通じなくて、今はどうか、唐辛子というと通るようです。ナンバを唐辛子というのは味噌汁をオミオツケというのと同じくらいに違和感があり、ナンバはナンバで、辛いだけでなく旨いものと思います。砂糖や味醂を使えば美味しくなるし、味噌やら生姜やら梅やらで生臭さを抑えることもあるようです。揚げたり焼いたりするならカレー粉も悪くありません。さて、ナンバですが、石川県では白山市の「剣崎ナンバ」が有名です。辛さが強くコクと旨味が特徴とされ、外見は長めのサイズで赤黒く艶やかです。昔は藁で結わえておいて要るときに抜くようにしていたのが魔除けとされ、見た目も引き締まりインテリアとして使えます。もしかしたら、虫除けとして実用性もあるかも知れません。ただ、子供の頃を思い出すと、簾のように編まれた赤黒いナンバに白く埃が積もり、自分の口に入れるには不安があります。これが囲炉裏の煙で燻されていた時代には、もっと別の楽しみ方があったのではないかと想像しています。青魚も値の張ることが多くなり、今のうちにイワシだけでも色々な調理方法で食べておきたいと思います。ナンバや大根にイシルや酢も身近で手に入る今のうち、大食いでもグルメでもないつもりですが、食べることに飽きるつもりもありません。
posted by 丹保社労士事務所 at 2023年02月28日
| スモールトーク
ひやひやのソフト更新

個人で事業を営む者にとって、これから一月ほどは税金の確定申告で時間を使う時期になります。仕事も家事も入り混じったレシートを整理したり、請求書や領収証を台紙に張り付けたりパンチして綴ったり、普段の仕事とは違った紙屑の分別みたいなことで悩むことの多いのが、これまでの2月3月の休日でした。ところが、ここ何年かのうちに行政の電子化の流れに乗って確定申告も電子化が進められ、紙の申告書を使わずにパソコンやスマホからeTaxとかeLTAXとかを利用する人が増えているようです。電子申告すると控除額が上乗せになるという話もあり、昨年は久し振りにカードリーダーを引っ張り出して、年号が平成で表示される会計ソフトを騙して使いながらパソコンで申告してみました。今年は基本的にデータが残っているので楽に申告できるつもりですが、いつの間にか基礎控除が10万円拡大されていると思ったら青色申告控除も給与所得控除も公的年金控除もそれぞれ10万円ずつ圧縮減額されていて、単純に差引20万円分が課税対象額として増えるのはこれに税率を乗じた分だけ所得税と住民税が多くなっていることが分かりました。うまい仕組みです。そしてこれからは消費税のインボイスです。顧問先のことを考えるとインボイスのコードも必要だと考えられます。おそらく、収入の増減に関わらず、この先はずっと消費税を払い続けることになります。うまい仕組みです。さすがに消費税の計算も必要ということになると、旧い会計ソフトをいつまでも使い続けるわけにはいきません。バージョンアップするたびに高額化するので更新を敬遠していた会計ソフトですが、新しく慣れないソフトに乗り換えるのも不安が大きく、従来と同じ会社の製品で消費税率が更新されて令和の年号が表示される会計ソフトを購入しダウンロードすることにしました。所得税申告もインボイス登録ももソフト更新も、自ら進んで申し込んでやっていることでも、ほとんど選択肢と言えるような選択肢は残されておらず、囲い込まれた折の中から別の折に入るのか入らないのかを決めているだけのようです。社会環境の変化に対応して自らをこれからの社会にコミットするには、そのための主体的な態度表明が求められており、それなりの費用負担が当然に求められることだと考えると、これは年ごとに新たな生命を求める宗教行事のようにみえてきます。個人の管理には住基カードといわれたものが廃れてマイナンバーカードに更新され、行政ではe-GovとかgBizとかを窓口に電子政府を推進するようです。私どもの業務自体がこのような行政の窓口と密接に絡むものであり、云わば、その手先としての役割を果たすべき立場にもあることから、事務所の日常が行政の窓口として深く取り込まれることを認識していく必要があると考えています。
posted by 丹保社労士事務所 at 2023年02月04日
| スモールトーク